ミサイル防衛の問題点
世界的に進む米軍再編、そして終わりなき対テロ戦争。その中で日米の軍事的一体化のシンボルとして日米ミサイル防衛計画が粛々と進められている。そこに隠されたアメリカの真の目的とは・・・。
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基礎知識編(3) MDへの対抗措置
2006/02/15(水) 03:27:10
多様な「対抗措置」を正確に分類することは困難だが,一例としてつぎのような整理も可能であろう。 ①防衛能力を圧倒する攻撃力の強化。たとえば,戦略ミサイル数の増強,戦略ミサイルの多弾頭化,細分弾頭(submunitions)に収納された生物・化学兵器など。②弾頭識別を妨害する方法。たとえば,おとり弾頭や金属片の散布,多くの金属箔を張った風船の一つに弾頭を収納する方法など。③弾頭探知を妨害する方法。たとえば,赤外線探知を不能にするための弾頭の冷却被覆,レーダー吸収物質による弾頭被覆,ミサイル追尾衛星に対する攻撃など。④迎撃体の弾頭攻撃阻止。たとえば,スクリーンや大風船の背後に弾頭を隠す方法,船舶からの巡航ミサイルや短射程ミサイル発射など。 「対抗措置」をめぐる問題は,かつてレーガン政権当時でもSDI 開発の難関の一つとされたが,その欠陥は今日のブッシュ政権下でも基本的に解消されていない。それは2001 年7 月,ブッシュ政権になってはじめておこなわれたミサイル迎撃実験の結果をみれば明らかである。この実験では,南太平洋クエジェリン島から打ち上げられた迎撃体が,おとりの風船や模擬弾頭を識別し,標的弾頭を破壊することに成功したと発表されたが,まもなくその限界が明らかにされた。すなわち,そこでは迎撃体が標的に命中しやすいように,弾頭からその位置を教える電子信号が発信されていたからである。 12月の2 回目の実験成功も,「目くらまし」のおとりは一つだけで,たとえその識別に成功したとしても,実戦で有効とは到底いえないとの批評がもっぱらであった。
中国保有の核弾頭数は約400,そのうち約300が戦略核である。戦略核運搬手段では,SLBM(巨浪1,2 号)がまだ戦力として十分機能していないとすれば,その中核は約20 基のICBM(東風5 号A)に求められる。中国の戦略核兵力について特徴的なことは,それがアメリカの先制第1 撃にきわめて脆弱的なことであろう。その理由として,つぎの諸点があげられる。 ①発射基地の位置が明らかになっている。②ICBMは横穴式サイロに収納され,発射基地が本格的に非脆弱化されていない。たとえICBM本体は破壊できなくても,横穴を封鎖し発射できないようにすることは容易だ。③ICBMの誤射を避ける意味で,発射基地と燃料,核弾頭貯蔵所との分離がはかられている。 このICBMの脆弱性のため,クリントン前政権の制限的なNMDでも,ましてやブッシュ政権の多層型MDシステムとなれば,それが中国の戦略核兵力にとって決定的な脅威となるのは明白である。さらに台湾にイージス艦その他のミサイル防衛能力が付与されることになれば,中国として台湾海峡をめぐる軍事紛争において,アメリカの介入を有効に抑止する手段を失なうことにもなりかねない。 要するに,MDシステムによるインパクトは,ロシアよりもはるかに中国について深刻ということになるのではないか。したがって,アメリカのMD 計画が推進されれば,中国の戦略核兵器の近代化,戦略核ドクトリンの修正にいっそうの拍車がかかることは確実である。 ICBMでは東風5 号の後継の東風31 号(固形燃料・車載移動式),あるいはさらに新型の戦略ミサイルの開発・配備,SLBM では巨浪2 号(MRV/MIRV)の開発が急がれ,戦略核ドクトリンでは核戦力の残存性(確証破壊=第2 撃能力)の強化による最小限抑止のいっそうの確実化,さらには戦域核兵器を前面にだしたより攻撃的な「限定的抑止」戦略への転換がすすめられることになろう。 こうしたなかで,米中間ミサイル危機が進行すれば,戦略ミサイルと核弾頭および燃料とを分離配備する方式も当然ながら修正され,弾道ミサイルの警報即時発射 (LOW) 態勢がとられるのにともない,偶発的核戦争の可能性が増大することも危惧される。 N.Y.タイムズに,アメリカがそのMD 計画について中国の理解をえるためには,その見返りに中国による核増強を黙認との政府高官の発言が報道され,議会筋のはげしい反発でブッシュ政権はこれを全面的に否定したが,こうした発言もMD 計画への中国の対応を考慮すれば,あながち理解されないわけではない。こうした政府高官の発言の背景には,中国による核戦力強化はアメリカにとって大した脅威にはならないし,またそれはMD計画があろうとなかろうと,折り込みずみとの判断も関係をもっていたのではないか。 日本の政府系シンク・タンク総合研究開発機構(NIRA)が,MD 問題に関連して米中両国による核兵器の先制不使用にかんする合意を提言しているが,同じような文脈での発想であろう。要するに,それは米ロ関係の場合と同じく,米中間でも公式および非公式のハイレベルな政治折衝で,アメリカは中国にも最小限の「戦略的保証」(strategic reassurance)を認めるべきだという主張だが,すでにみた中国の核兵力増強に対する否認からも明らかなように,少くともそうした意見がアメリカで一般化する状況は考えられない。
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